神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

<< エトー main 首都 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています



- - -
船出
 トーダは瞳を見開いて、棟の段を降りた。
 エイジアの肩に手を置いて言った。
「我々と来ないか?」
 エイジアはとっさに身を引いた。
 トーダは笑顔を浮かべた。
「無理もない。理由も分からず知らぬところにゆくのは勇気がいる。」
 段に座ると、エイジアにも座るように勧めた。
 エイジアはトーダの横に座った。
「我々は地図を作っていると言った。それも事実だ。だが、もうひとつ大事な役割がある。」
 トーダはシュトに帰る日の朝になってそれを明かした。
「この大陸の首都は素晴らしいところだ。なにもかもが進んでいる。だが、ひとつだけ足りないものがある。」
「それが『ジン』?」
 トーダは驚いてエイジアの顔を見た。
「なぜ知っている?」
「トナンに聞いた。」
 トーダはそうか、とうなずくと続けた。
「きみも知っているかもしれないが、エイジアの民は世界に散った。その中でも古い民がいた。そして、その民に伝わるのがその『ジン』だ。」
「『ジン』って何?」
「今シュトのすべてはひとの思考によって動く機器によって暮らしは成り立っている。そう、ランバーもそういうものだ。」
 エイジアはうなずいた。
「だが、その動力源ともいえる人の思考の中に、『ジン』がないと・・。」
 トーダは少し言葉を切った。
「冷たく、危険な働きをする。」
 トーダは遠い目をした。
「昔はあったのだ。それらの機器を作り出した時、それはあった。当然のように。だからそういう機器も生まれた。この大陸が生まれて千年経った頃だ。絶頂期だった。だがそれから千年経った今、それは薄れかけ、我々はそれを必要としている。」
 再びエイジアの顔を見て少し笑いかけた。
「いにしえからのそれを探し求めている。それはこの惑星が五大陸の時代から細々と伝わり、その守り手の最後の一族がエトーというらしい。だから、この星の隅々にまで渡って探し続けている。もし、きみがそのエトーとつながりのある者ならば、ぜひ力を貸してほしい。」
「だが、なぜそれを隠していたんだ?」
 トーダはひとつ息を吐いて密やかに告げた。
「それを狙う者もいる。」
「狙う?」
「『ジン』に欲を持って触れようとするなら、それは内なるサイタンを呼ぶ。純朴な心でもって接することでそれは本来の宝となる。」
「サイタン?」
 トーダが目を上げて見た方をエイジアは振り返った。
 ナダイが立っていた。
「やはりそうか。」
 ナダイはそう言ってトーダのそばに寄り、エイジアを見て言った。
「潮が来た。おまえの潮だ。」
 エイジアはナダイ・アの顔を見返した。
「言ったろう。これがその潮だ。」
「ナダイにはわかるのか?」
 エイジアはきいた。
 ナダイはうなずくとこうも言った。
「ああ。それが大きくうねる潮だということもね。」
 だが、もうナダイの瞳は後戻りしてはいなかった。
「あたしにはそれがなんだかわからない。だが、おまえの潮には違いない。」
「エトーという名しかわからない。後は何も知らない。なんの記憶もないんだ。なんの役に立つ?」
「エトーというのを思い出したんだろう?ではまた何か思い出すだろう。」
 トーダもうなずく。
 その後ろにいつの間にかトナンとデンも立っていた。
「エトーなのか?」
「いや。エトーと逃げろと言われた、という。エトーに近い者だ。だが、今までにこんなに近いものは何も見つけられなかった。初めての収穫だ。ここに漂着してよかったんだ。トナン、おまえの爆発も意味があったな。」
「出会いの時が来たんだな。」
 サオ・ハの声がした。
「あと少しで迎えが来る。仕度しておいてくれ。」
 エイジアの返事を聞かずに、それだけ言ってトーダは立ち上がった。
 エイジアとナダイは黙ったまま家へともどった。
 ナダイは黙々とエイジアの荷造りをした。
「わたしは行くべきか?まだいったいなんのためにゆくのかもよくわからないっていうのに。」
 エイジアが投げかける言葉に、ナダイは手を止めて振り返った。
 少し黙ったままでいたが、つぶやくようにエイジアに聞いた。
「どうして思い出したんだ。急に。エトーだの。」
 エイジアは少し言い淀んでから告げた。
「ランバーにもぐりこんで閉じ込められたんだ。闇の中で力を抜いていたら気を失ってその合い間に切れ切れに感覚を思い出した。たぶん経験したであろうことを。気がついたら映像の浮かぶ球体に薄明かりが灯っていて、扉が開いた。ランバーは生き物のようだった。」
「エイジア。」
「・・。」
「おまえのゆくところは天のようなところか、地獄のようなところかはわからない。その両方かもしれない。」
 うなずく。
「だが、これだけは覚えておいてくれ。おまえの生には意味がある。」
「・・。」
「その意味を生きな。」
「?」
「おまえが船なら、船は陸にいちゃ行けない。わかるか?」
 エイジアはただ黙ってうなずいた。そして、ナダイを思い切り抱き締めた。
 ナダイは笑って背中を思いきり叩き、うながした。
「さあ。行きな。」
 いつもの、からっとした満面の笑みで、ナダイはエイジアの背中を押した。

JUGEMテーマ:連載




Story comments(0) trackbacks(0)
スポンサーサイト


- - -
comment



この記事のトラックバックURL
http://planet-jin.jugem.jp/trackback/8
trackback
S M T W T F S
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
<< August 2017 >>
Selected Entries
Categories
Profile
Archives
Links
Mobile
qrcode
Sponsored Links