神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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シュト
 『訪問者』が訪れた夜が明けた。
 明け方に寝静まった村は静かだった。
 エイジアはまんじりともせず、村をぶらついた。
 気がつくとランバーの乗組員たちの休む棟の前に立っていた。
 サオ・ハが起きて、こちらを見ている。
 小さく会釈すると、向こうも返した。
 サオ・ハの座る階段の一段下にエイジアも座った。
「ひとつ、聞いてもいいか?」
 エイジアの問いにサオ・ハはうなずいた。
「トーダはエイジア人か?」
 サオ・ハはうなずいた。
「わたしもエイジア人らしいんだが、記憶がないんだ。エイジアの民は他にもいるのか?」
「首都にはあらゆる民がいる。」
「シュト?」
「この大陸の中心地だ。ずっと内陸にある。」
「そこから来たのか?」
 サオ・ハはうなずいてみせた。
「それってどういうところだ?」
 サオ・ハは遠くを見るようなまなざしを見せ、そしてつぶやくように言葉を漏らした。
「キラウア山は空高く聳える。あれはまさに天に届く山だ。」
「キラウア山?」
「休火山だ。首都はその裾に広がっている。」
「広がっている?広いのか?」
「あなたはここから遠くへ行ったことはない?」
 エイジアは少し困った顔をして答えた。
「・・たぶん、遠くから来たんだろうと思うんだが、覚えていないんだ。」
 サオ・ハはエイジアの顔を透かしてその向こうを見るような目をしてつぶやいた。
「随分北から流されてきたみたい。」
「えっ?」
「船だ。でも・・その船はどこから来たんだろうな。」
「何か分かるのか?」
「断片的にね。でも必要な時でないと見えないことは多い。」
 サオ・ハはエイジアが黙ったのを見て、初めてほんのりと笑みを浮かべてみせた。
「首都は広い。人も多い。でも、空から見ると一面の緑。」
「集落は見えないのか?」
 サオ・ハはうなずいた。
「まるで緑に埋もれるように建物は建てられている。」
 そこへデンが起きて来てふたりのそばに座った。
「あなたたちは地図を作る仕事をしているんだって?」
 エイジアの問いにデンもうなずいた。
「じゃ、世界中に行ったはずだ。エイジアの民はどうなったんだ?」
 デンはサオ・ハと顔を見合わせると、答えた。
「世界中というが、この大陸以外は小さな島ばかりで、あとは海だ。人はこの大陸に生きる者でほとんどだ。大昔に地殻変動があった。昔は5つも大陸があったそうだ。エイジアもその中の大陸や島々にいた民だ。」
「あなたはどこかの島でかろうじて生き延びた一族だったのかもしれないね。そして船で大陸を目指したのかもしれない。」
 サオ・ハがまた遠い目をしてこちらを見ていた。

 3人で話していると、ナダイたちがつる籠を手にやって来た。
 朝食の時間だった。
 トーダとトナンも起きて来た。
 老も手を上げてにこにこと笑みながらやって来た。
 ともに朝食を囲んだ。
 トーラの実のふかふかしたところを乾燥させて粉にして焼いたトラビと、魚を塩と少しひりっと辛いもので煮込んだ汁が並んだ。
「問題はきみらのランバーよの。」
 老が口火を切ると、トーダは首を振った。
「いや、それはそう問題ではない。」
「えっ?」
 老とエイジアは声を上げた。
「問題は・・。」
 そう言ってトナンをちらっと見た。
「トナンの怪我は半月もすればよくなる。」
 慰めるように老は言った。
 だが、トーダは黙って微かに笑ってみせるだけだった。
 トーダが笑った理由は、すぐに村の者にも知れた。
 トナンは少し変わっていた。
 必要最低限の返事しかしない。初めは傷が痛むせいだと思った。だが何日経っても、顔色がよくなってきても、トナンはむすっとした機嫌のわるい顔のままだった。
「なんであいつは船に乗っていたのかね?」
 ツーリはランバーのことを船と呼ぶ。
 首を傾げるツーリにナダイは笑い飛ばしながら言った。
「そりゃ必要だからだろ?少ない人数で航行するんだ。よけいな者は乗せないだろう。」

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