神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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エトーの智慧
 ユーニスはドラゴの目を見て一瞬驚いたような顔をし、目を見開き、そして、立ち上がった。
 そして自ら議長の椅子を降りて、ドラゴを招いた。
 ユーニスの次の言葉を聞いて人々はどよめいた。
「ようこそ。エトー。」
 ドラゴは否定しなかった。
 議長席の横で立ったまま、みなの方を向いた。
「わたしは前に言った。『待たれているものはどんな形であろうとやってくる。』と。」
 静まり返った議場にドラゴであるところのエトーの声は響き渡った。
「残念ながらこのような形でやってくることになった。」
 しんとした湖に、哀しみのような懺悔のような色の波紋がひろがるような、そんな声を発してエトーはぐるりと人々を見渡した。
「わたしは待っていた。ジンとは妙(たえ)なるものだ。人々が受け入れる準備が整わなければ、それはここに顕われても顕われたとは言えないだろう。」
 そこでちょっと区切るとかみしめるように言葉を口にした。
「ひとはサイタンなのだ。あらゆる人が。例外はない。」
 議場の人々はざわめいた。
「ひとは自分ではない、誰かがサイタンだと思う。だが、何かを求めるとき、何かを虐げていないことはない。サイタンである人ができるのは、自分こそがサイタンであるとわかっていることぐらいだ。」
 物想いにふけるようにエトーはいったんうつむき、再び顔を上げると一歩前に歩を進めた。
「どこまで時を待つのか、わたし自身も揺れた。」
 エトーの意外な言葉に微かなざわめきが起こった。
「なぜ今、ここに・・。」
 トーダの絞り出すような声がした。
「痛みを負わせながら、だが、待たなければならなかった・・。何よりもひとが自分のサイタンに自分で気づかなければ、これは受け取れない。」
 再びしんとした。
「だが今こそ、ひととしてここに来なければと思った。エトーである前に。」
 アテヒトの方を向いて微かに眼差しだけで微笑んだ。
 アテヒトはエトーであったドラゴの、事故現場で見せた、哀しみと懺悔を引き受けたあの深い瞳を思い出した。
 サオ・ハはアテヒトがエトーのこころを開いたことを心の内で洞察していた。
(アテヒトだったね・・。ジンに触れたのは。)
「ここに、事故の犠牲者への哀悼の意を捧げる。」
 しばらく黙とうが続いた。
 再び目を開いたエトーは告げた。
「もし、まだ受け入れがたい気持ちを抱く人々がいるならわたしはここを去るだろう。選択はあなたたちにゆだねる。」
 ユーニスはアルハラの方を振り向いた。
「どう答えますか?」
 アルハラは言葉を無くしていた。
 内側のかっとうと向き合っているようだった。だが、否定する言葉はなかった。
 否定していた人々はみな、アルハラのように言葉がなかった。
 なぜなら、今まで見たことも感じたこともない手触りの人間と向き合っていたからだ。
 それが何かと、言葉にすることが出来なかった。
「これが答えです。」
 ユーニスの答えにエトーはうなずいた。
 エトーはやっと、みなに向き合える議長の椅子に座った。
「では、紐解こう。ここに。・・エトーの智慧を。」
 エトーは目の前で書物を開くような仕草をしてみせた。
「ここにエトーの智慧はある。」
 開かれた掌を見て、人々はさざめいた。
 明らかな形のあるものを期待していた人々が思わずもらしたささやきだった。
 エトーは微笑んだ。
「では、ゆこう。」

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