神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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サイタンの僕
 事態の収拾に追われたユーニスがようやく議会を開いたのは事故から5日目だった。
 アテヒトは議場に入ってすぐにピリピリとした空気を感じた。
「我々のシステムはこうも脆いものなのか?」
「違う。想定外のことが起きたんだ。今までの二千年はこれでやってきたじゃないか。」
「想定外、ということがあること自体がすでに脆いんだ。だから根本的なことに早く向き合うべきだったんだ。」
「なんとかしないと、これで済まないぞ。」
 言葉が飛び交っている。
「そうやって怖れをあおるな。何も戦争が起きたわけじゃない。もっと冷静になるんだ。」
 そう言ったアルハラの胸ぐらをつかんだのはデンだった。
「人が死んだのをなんだと思ってるんだ!」
「ジンを入れたいというやつらこそ、敵対を産んでいるんだ。その不安定な心が事故を産む。どうしてそれがわからない!」
 アルハラの声と同時ににぶく肉に拳が食い込む音がして彼は崩れ落ちた。
「デン!」
 ユーニスが叫んだ。
 デンは憎しみの色を顔から隠さずに、大きく肩で息をしていた。
 アテヒトはあっと直感してサオ・ハを見た。
 サオ・ハも見返して、微かにうなずいた。
(モリンが・・?)
 ユーニスは大きな息をつくと、低く響く落ち着いた声を出した。
「サイタンの僕(しもべ)とならぬよう。たとえ何があろうとも憎しみはジンに何よりも遠きもの。デン。あなたは退場しなければなりません。自分は人間の代表であるという意識をしっかり持ちなさい。あなたのこころがあなたをくいとめなくて誰がくいとめてくれるというのです。」
 デンは震える拳をもう片方の手で押さえながら、うなずいて、そして出て行った。
 アテヒトは後を追った。
「デン!モリンは!?」
 怒りながら泣きそうでもある無防備な顔をして、デンはアテヒトを見た。
 そして収まりつかぬ感情の生き物に操られるように、拳で白い壁を殴った。
「遅かった!アルハラも!オレも。ぐずぐずしてる間にこうだ!取り返しがつかない!」
「デン・・。」
「オレはいったい何をしていたんだ!迷っている場合じゃなかった。ジンを入れなければこうなることはわかっていたんだ。失ってみて初めてさいなまれるなんて・・。」
 少し血のにじむ拳を閉じたまま、脱力したようにデンは立ち尽くしていた。
「ジンを入れればそれで済むのか?」
 声がして振り返った。
 トナンがいた。
「どっちもどっちだ。ジンさえあれば何かが起こると思ってる。外のジンにおびえ、外のジンばかり探してる。」
「オレはもっと何かをやるべきだった。」
 デンが言うのに、トナンは答えた。
「過去なんかいい。今、そのこころに向き合え。何もしなかったっていうその悔しさと、それをひとにぶつけてるってことと。ジンを迎えるにはきっとその痛さにも耐えなきゃだめだ。でなきゃ簡単にひとと争う。そしたらジンが受け取れない。」
 そこまで言って、トナンはアテヒトの方を向いて苦笑して言った。
「それはあたしのことだ。そうだな?」
 アテヒトは答えられない、というように首を振った。
 その時、ドラゴとバギがこちらに向かってやってくるのが見えた。
 ドラゴたちはまっすぐ議場へと向かっていた。
 ドラゴは何も言わなかった。
 あの、森のような、深い湖のような目で、立ち止まらずにまっすぐ前を向いたままアテヒトたちの間を抜けていった。思わずアテヒトが、トナンが、そしてデンまでもがその後ろについて議場の扉を開いた。
 議場にいた人々は一斉に扉の方を見た。

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