神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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待たれているもの
 翌日ユーニスは迅速に議会を召集してくれた。
 その場にはドラゴもバギも呼ばれた。
「では、議会を開く提言をしてくれたサタ・アテヒトからまず。」
 ユーニスはアテヒトを指名した。
「わたしは今まで“お客さん”で、“見物人”でした。このことの意味がよくわかっていなかったからです。ですが、自分の問題だとわかったので向き合う必要が出てきました。誰ひとりこのことから逃れることは出来ないとわかったんです。この惑星に生きているものすべて。そうでしょう?」
 トーダやエルナハンがうなずいた。
「ひとのこころが首都の機器にかかわっていると聞きました。実際にそれを見ました。だけど、それだけの問題じゃない。このところの噴火などの大地の動きも、それと関係しているとも聞きました。この会議は『首都の会議』にしないでほしいんです。この星全体の行く末を決めているんだって、思って欲しいんです。そして、今だけでなく、未来に渡ってを見渡して欲しいんです。」
 議場は静かだった。
「ジンがなんなのかによって、それをわたしたちがほんとうに望むのか、望まないのかがもっとはっきりしてくるんではないでしょうか?わたしたちに何が欠けていて、何を必要としているのか。」
 立ち上がったのはエルナハンだった。
「アテヒトがいうのはもっともだ。我々はもっと広い責任を持つべきだ。その上で話をしよう。」
 ケーニヒが立った。
「たしかに、そういう視点が薄かったことは認める。その上で、ジンについてもっと語り合おう。」
「ではジンをどういったものだと思うか、思うところをそれぞれ言ってみてはどうだ?」
 そう言ったのはアルハラだった。
 アテヒトはアルハラがそう言うのを聞いてほっと肩の力を抜いた。
「では、そういうアルハラから。」
 ユーニスにうながされて、アルハラはゆっくり立った。
「わたしにはジンは脅威だ。というのも、ジンが播かれることによって何が起こるのか予想がつかないからだ。もしもそれによって平安と繁栄が保証されるなら喜んでそれを迎え入れるだろう。だが、今以上のこころの負担、社会の動揺などが起きるならそれは不必要に感じる。」
「たとえそれによって未来にもっと禍根を残したとしても?」
 トーダの問いへのアルハラの返事はなかった。
 返事がないことでアルハラの不安の大きさが伝わった。
「では今まで発言していない人の意見も聞きましょう。誰か?」
 そう言ってユーニスは議場を見渡した。
 ユーニスの声に立ち上がったのは細面の男性だった。
「ケイサン。どうぞ。」
 うながされてケイサンは発言した。
「ジンはよくわかりづらい。そうは思わないか?目には見えないしそれがどう影響するのかはほんとにはわからない。だから入れるの入れないのと言われても判断しにくい。むしろ不安を覚える。」
 ケイサンの言葉にうなずく者が多数いた。
「発言していいでしょうか?」
 おずおずとながらハワが立ち上がって、そして訥々と話し出した。
「わたしが思うジン、というのは、よくわかりませんがわたしの息子が笑うような働きのことかと思います。わたしがごく最近息子が笑うのを見たのは、アテヒトが息子に笑いかけてくれた時のことでした。どうしてなのか、ずっと考えていました。そして、思ったんです。ひとが、ひとに心底敬愛のまなざしで見つめられたなら、そのひとの何かが輝く。それはジンの働きのひとつではないかって。こころの底のそんな想いをジンと呼ぶのではないかって。そしてジンは、ひとが障害のように思うものを超える力を支えてくれる、もしかしたらそういったものではないかって。」
 ハワはそう言って座った。
「他に。」
 トナンが手を挙げた。
 ユーニスがうなずいた。
「わたしはずっと怒りを抱えて来ました。それがいったいどこから来るのかずっと自分でもわからなかった。ですが、最近思うのです。正しさよりももっと深いものがあるって。正しさは逆にそうでないものを生みます。ジンはそういったもののもっと深みにあるもっと広い地平じゃないかって。そう思う時のこころのひろがりが自分をいきいきと甦らせてくれることに気づいたんです。」
 トナンはそう言ってから、自分の中を吟味するように少し黙った。
 そして口を開いた。
「ジンは、たぶん・・。あらゆる縛りから解き放たれてひとが甦り、新たに生き直せる、そんな力を秘めている、そんなもののような気がします。」
 アテヒトはそう表現するトナンの表情が、やわらかくくつろいでいるのを感じた。
 ドラゴの言葉を思い出した。
[ひと、ありき、なんだ。ジンがただ、ジンだけあって、なんになる。受け取る人間がいなければ、ジンはただ、そこにあるだけだ。ひと、次第なんだ。]
「ドラゴ。何か言ってください。」
 思わずアテヒトはドラゴに向けて言葉を発した。あわててユーニスを見た。
 ユーニスはうなずいた。
 ドラゴは眉ひとつ動かさず立ち上がりもしなかった。
「さあ。何か。」
 ユーニスが重ねてうながした。
 立ち上がることはなく、ただやっと、一言告げた。
「《待たれているものはどんな形であろうとやってくる》・・そうだ。」
 そして立ち上がり、扉に向った。バギも後を追った。

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