神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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ひとつのいきもの
 ドラゴの部屋を出てロビーを通りかかったとき、声をかけられた。
「アテヒト!」
「トナン。」
「議会に出ていなかったね。」
「ああ。ユーニスの指示でちょっと出てた。」
 トナンはアテヒトを手招きした。
 アテヒトが近づくと、トナンは小声になった。
「実は、バギがおかしい。」
「えっ?」
 ドラゴとともに首都にやってきた熊男のバギのことだ。
「おかしいって何が?」
「不審な動きをしている。首都のあちこちに出没してる。」
「それってどういうこと?」
 トナンは首を振った。
「わからないから、追っていた。単なる物珍しさで見物してる風情じゃない。まるで何かを探ってるようだ。」
 腕組みをしたまま黙ったトナンは、アテヒトの方を見て言った。
「ドラゴはエトーを知っていると言った。それがほんとうだとしても、ドラゴがここに来た目的がなんなのかはちょっと謎なんだ。バギはドラゴに忠実のように見える。つまりはドラゴの意を受けて動いてるとしか思えない。ユーニスはでも、エトーに近い唯一のつながりとして、その謎を解くためにわざと泳がせているんだ。アテヒトは何か感じないか?」
「何かって・・。ドラゴは最初の印象よりもずっと思慮深いひとだって感じてるよ。」
「その目的いかんによってはサイタンを呼ぶ可能性もある。気をつけろ。賢さすらサイタンから逃れる条件じゃない。」
「じゃあ、一体何がサイタンから逃れる術なんだ?」
 トナンは黙った。
 しばらくしてやっとやっと絞り出したというように言葉にした。
「ここだ。」
 胸をたたく。
「?」
「ここが重い。ここが苦しい。ここがつらい。ここが気持ち悪い。そういったものでない、ここかってことだ。それをいつもじぶんでわかってるかってことだ。ほんのかすかな感じだ。気をつけないと見過ごす。」
「・・。わかるような・・。わからないような・・。」
 アテヒトは苦笑して、そして思い出したように告げた。
「トナン。」
「なんだ?」
「言ってなかった。ありがとう。」
「なにが?」
「わたしを助けてくれたろう?」
 トナンはほんとうに忘れていたように一瞬きょとんとした顔をしたあと、ほんのり頬を染めた。
「ばか。よしな。じゃあ、気をつけろよ!ドラゴの部屋へよく行ってるようだから。」
 そう言うと手をあげて去っていった。

 アテヒトは自分の部屋でティーサービスマシンを呼びながらその動きをぼうっと見つめていた。
 たしかにうまく出来ている。かゆいところに手が届くような動きをする。
 空調も照明も、料理の火加減もすべてひとのこころの微かなゆらぎを受け取って動いているという。
 立ち上がって窓辺から闇に沈む外の景色を眺めた。
 森が深いので灯りは満天の星くらいだ。
(この惑星はこの首都のある大きな大陸がひとつと海と島々で出来ていると言ってたな・・。)
 たくさんのひとの想いがこの都市を動かしている。
 まるで首都はひとつのいきもののようだった。
(ひとつのいきもの。)
 自分の胸に生まれたことばに、胸を突かれた。
 ハッと思い出した。ドラゴに出会ったとき、サオ・ハが言ったことばだ。
[首都の民にジンが失われるということは、この星からジンが失われていくということ。ならば、どこにいようとその影響は受けます。人から遠く離れて暮らそうとも。]
(ナダイ・アもツーリ・ウもウノも。父さんが生きているなら父さんも。そのあおりを受けるということ?・・遠く離れていてもつながっている、ということ?)
 たしかに首都の機器と自分たちとはつながれているわけではないが、通じている。
 アテヒトは愕然として座り込んだ。
(じゃあ、これは首都がジンを迎える、という話じゃないじゃないか。)
 連絡スイッチを押した。
 トーダが出た。
「今すぐ会いたいんです。」
 飛行艇でやってきたのはトーダとエルナハンだった。
「どうしたんだ?」
「わたしは他人事だった。」
「えっ?」
「ここでわかっていなかったんです。このことがどういうことか。」
 そう言ってアテヒトは自分の胸をたたいた。
「どういうことだ?」
「このことは首都だけの問題じゃないじゃないですか!」
 トーダとエルナハンは言葉に詰まった。
 トーダはうめくように言葉を口にした。
「そうだ。だから我々はやっきになって探してきた。」
「これはわたしの問題で、ナダイ・アの問題で、ウノの問題で、ドラゴの問題だ。もちろん、トーダの問題で、アルハラの問題です。もう一度議会を開くべきです。ドラゴも呼んでください。」
 トーダとエルナハンはアテヒトの切羽詰まった様子に顔を見合わせた。
「ユーニスにはかってみよう。」

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