神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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ひと
 デンに宿泊施設に送ってもらうために並んで歩きながら、アテヒトはつぶやいた。
「同じ憂いが違う考えを生むとはね。どちらもまっすぐ解決するような道はないんだろうか?」
 デンは黙っていた。
 そういえば今日は議会でデンが発言することはなかった。
「デンはどう思っているんだ?」
「オレはどっちの気持ちもわかる。だから何も言えなかった。」
「それが普通の人間の代表ってこと?」
 デンはそれを聞いて笑った。
「まあ、そういうことかもしれないな。ジンを入れたい気持ちと、そうでない気持ちの両方あるってことだ。ひとりの人間の中にもね。」
 アテヒトは立ち止まった。
 急に立ち止まったので、デンはアテヒトにぶつかりそうになった。
「どうしたんだ?」
「じゃあ、アルハラの中にもほんとはジンを受け入れたい気持ちがあるってこと?」
「勘違いするなよ。オレがそうだからって、みんながみんなそうじゃないだろう。」
 だが、アテヒトの顔は急に曇りがとれたように明るくなった。
「そうか。表に現れていることがすべてじゃないさ。自分でも気づかない気持ちだってあるだろ?」
 デンは肩をすくめた。

 飛行艇は暮れかけた森の上を飛ぶ。
 アテヒトの中に、自分でも思い掛けない想いが湧いていた。
(みんながほんとうに望んでいるものってなんだ?)
(つまり・・ジンってなんなのか?ジンによって何がどうなるのか、それをもっと知りたい・・。)
 夕食もそこそこに、アテヒトはまたドラゴを訪ねた。
 何か、ドラゴが一番今の自分の気持ちに答えてくれそうな気がした。
 扉を開けたドラゴは可笑しそうに苦笑した。
「またかい?今日はなんだい?」
「議会があったんだ。」
「議会?」
「ジンを首都へ入れるか入れないかの。」
「ふん。」
「ドラゴはどう思う?ジンを首都に入れた方がいいと思うかい?それとも?」
 ドラゴは少し黙った。
「聞く相手を間違ってる。オレは首都には関係がない。正直いって気まぐれでここへ来ただけだ。」
「そんなのどっちでもいいさ。」
「え?」
「今ここにいるドラゴに聞いてみたいんだ。」
「なぜ?」
「首都の人間じゃないからこそ、思うこともあるだろ?それに、なんていったって、ドラゴはエトーを知ってるんだ。エトーは首都にジンを伝えたいと思うだろうか?」
「そりゃ、やつはそう思うだろう。それがやつの使命だ。」
「ジンってなに?」
 アテヒトはドラゴにまっすぐ向き合って、そのひざに手を置いた。
「ドラゴの思うジンを言ってみて。」
 ドラゴはアテヒトのまっすぐな目に見つめられて、ふっと力を抜いた。
「おまえのそれだよ。」
「え?」
「エトーに聞いていたのはね。」
「なんのこと?」
「おそれも不安も持っているのに、まっすぐなんだ。」
「?」
「だからオレはここへ来た。そんな人間に興味を引かれないやつがいるか?」
「どういうこと?」
「ひとは弱い。おそれはひとを簡単に曲げる。曲がっていない人間なんてほとんどいない。だが、おまえは弱いくせにまっすぐだ。いいかい、そのいくらでもしなやかになれるまっすぐさっていうのは、誰にでもあるわけじゃなく、でもほんとは誰にでも眠ってるひとの本来の魅力なんだ。それこそが、人間なんだ。」
 アテヒトはドラゴの膝に置いていた手を離しながら、ソファーに深くもたれこんだ。
「ドラゴの言っていることがよくわからないよ。わたしのことを聞いたわけじゃないんだ。」
 ドラゴは薄く笑いながら、言葉を継いだ。
「ひと、ありきなんだ。ジンがただ、ジンだけあって、なんになる。受け取る人間がいなければ、ジンはただ、そこにあるだけだ。ひと、次第なんだ。」
「・・・・。」
 アテヒトは身を起こした。
「つまり、ひとが大事だってこと?ジンではなく、受け取るひとこそが。」
「そうなんじゃないか?オレに聞くなよ。どうしていつもオレに聞くんだ。ばかだな。」
 アテヒトはまたドラゴに顔を近づけてドラゴの目をじっと見た。
 ドラゴは微かに動揺しそうになったがかろうじて耐えた。
 アテヒトはその目を離さずドラゴに聞いた。
「ジンが播かれるとどうなると思う?」
「さあね。だが、それは待ち望まれてるんだろ?遠い年月もあらゆるものも超えてずっと待ち望まれてきたんじゃないのか?他に何を望む?だったら流れは止められないさ。」
「死すらも超えて?」
「さあね。」 
 アテヒトの目が笑った。
「ありがとう。おじゃましました。」

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