神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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同じ憂い
(サオ・ハのようなものでなくては、ジンに触れることはかなわないのではないか?)
「・・それは違うよ。」
 その時、サオ・ハがアテヒトの方を振り返って言った。
 アテヒトは驚いた。
 今の自分の思考に、サオ・ハは答えたのか?
「わたしじゃない。ジンに触れるのは。」
 議場はさざめいた。
「なんのことだ?」
 アルハラがつぶやいた。
「死への不安が我々を覆っているとして、」
 エルナハンが話を進めた。
「それが乗り越えられるものだろうか?というよりも、受け入れて最善をつくすしかないではないか?」
 サオ・ハは再び元の話にもどった。
「ええ。つまり、同じところから話をしていると言いたかったんです。どちらも。」
 エルナハンはうなずいた。
 サオ・ハは続けた。
「であるなら、その同じ憂いをどう埋めてゆくのかに行き着きます。」
「それは同じだ。死については乗り越えられるものなら乗り越えたいが、できぬなら受け入れて最善をつくすしかない。サオ・ハが言うには、我々は同じ悩みを違う方法で向き合おうとしているということか?我々の不安はそこから来ているというのか?」
 アルハラが言った。
 少し、さきほどまでの強硬さが薄れていた。
「さっき言ったジンに触れるのはわたしじゃない、とはどういう意味だ?」
 ケーニヒがサオ・ハに問いかけた。
 サオ・ハは微笑むと答えた。
「今のはアテヒトへ答えたんです。わたしのような者じゃなくてはジンに触れることはかなわないのではないか、とアテヒトが思ったから。」
「そうなのですか?」
 ユーニスが聞いた。
 アテヒトは立って答えた。
「そうです。今、そう思っていました。」
「それはどういう意味だ?」
 トーダが聞いた。
 アテヒトはサオ・ハを見た。
 サオ・ハは何も言わなかった。アテヒトが口を開いた。
「サオ・ハの中にあるこの切なさをみなさんは感じますか?」
 しんとなった場に続けた。
「わたしはジンが何かなんてわからない。だけど、感じるんです。おそらく、ジンに触れるには、サオ・ハのようなピュアさがなければそれはかなわない。そうでなければ、それはまるでジンとはほど遠いものになるのでは?サイタンを呼ぶと警告されているのは、そういったことなのではないでしょうか?」
 沈黙が支配した。
 ようやくそれを破ったのは、エルナハンだった。
「わたしじゃない、と言ったのはどういう意味だ?」
 サオ・ハに問うていた。
 サオ・ハは年に似合わぬ大人びた表情をしてふっと笑った。
「言葉通りですよ。わたしは境人です。わたしにはまっすぐ届いてしまうものがある。それは望んでも裏切れないものです。わたしでないということだけはハッキリ言えるのです。」
「じゃあ、それは誰、ということだ?首都の誰かなのか?」
 反対派であったケーニヒが思わずつぶやいた。
「届かないものもまっすぐ言わなければなりません。わたしにはそれはなんとも言えないということだけ今は言えます。」
 ユーニスが発言した。
「話の筋を元にもどしましょう。我々はジンを入れるのか入れないのか。どちらの派の底にもある死への不安をどう埋めてゆけばいいのか?」
「それがジンを受け入れるということだ。」
 トーダが言えばアルハラも主張した。
「それがジンを入れないということだ。」
 サオ・ハはそっと笑った。
 静かに席を立つと、まるで風のように音もなくふっと、議場から去っていってしまった。

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