神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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トナン
 ロビーに入ると、見知った顔があった。
「トナン。」
「どうした?回復してきたのか?」
 デンが尋ねた。
 トナンはうなずいた。
「しばらく保養施設でゆっくりしろといわれた。」
 トナンの目線を追って、デンが答えた。
「ドラゴとバギだ。エトーのことを知っているというので連れて来た。そうそう、彼のほんとうの名がわかった。アテヒトという。」
 アテヒトはトナンと目が合って、少し笑ってみせた。
 トナンもほんの少し目をゆるませた。
 やはり少し回復してきているらしい。
「オレはドラゴたちを部屋に案内する。じゃあな。」
 デンが去って、アテヒトはトナンとふたりになった。
「いつから?」
「さっき来たとこ。」
 どちらからともなく、ロビーのソファーに座った。
 トナンは村にいた時と違って、肩の力を抜いてきていた。
 アテヒトに聞いた。
「エトーの件は進んでるか?」
 アテヒトはあいまいにうなずいた。
「そうのようでもあるし、そうでもないようでもあるな。」
 トナンは少しクスリと笑った。
 トナンの笑った顔は初めて見たと、アテヒトは思った。
「今はトナンはメンバーじゃないのか?」
 トナンは首をすくませると、淡々と答えた。
「好きでなった仕事でもないし、好きでなれる仕事でもない。あたしはあたしだ。」
 アテヒトはなぞの多い今の状況に少しストレスを感じていたので、トナンにそれを違う形でぶつけた。
「トナンは何を怒っていたんだ?あんなにチリチリと。あれじゃランバーだってやられる。」
 言ってしまってから、言わなければよかったかと後悔したが、トナンは特に動じる気配もなく答えた。
「何かが違ってると思えた。正しいものを追いかけているというのに、その正しさゆえにイライラした。自分でもそれは説明できないものだ。」
 アテヒトは黙った。
 なんだかわからないが、なにかわかる気がした。
「トーダが嫌いだったのか?」
 トナンは小さく首を振りながら
「トーダが嫌いなんじゃない。トーダの中にある何かだ。だけど・・。」
 そう言って小さく息を吐いた。
「それは自分にもあるものだ。」
 そう言って笑みを浮かべると、立ち上がった。
「ここにいるならまた会うこともあるな。」
 アテヒトはうなずいた。
「なんていったっけ?ア・・」
「アテヒト。」
「じゃあ。また。アテヒト。」
 アテヒトは手を挙げた。
 トナンも片手を挙げて、振り返らず、去っていった。

「振り出しにもどったな。」 
 トーダがつぶやいた。
 白い会議室では、ユーニスとエルナハン、トーダとサオ・ハ、デンとアテヒトが円を描いていた。
「エトーがこちらに向かっているなら、ありがたい。」
 デンが口をはさんだ。
「だが、こちらも探さないと。エトーの無事を確保しないとならない。」
 トーダが言う。
「サオ・ハ。」
 ユーニスがサオ・ハをじっと見ていた。
「言ってごらんなさい。」
 サオ・ハは考え込んでいたようで、一呼吸おいてから返事した。
「はい?」
「何が気になるのです?」
「・・。ドラゴです。」
「ドラゴの何が?」
「エトーはドラゴになぜそこまで話したのだろう?」
 一同は黙った。サオ・ハはつぶやいた。
「あの人にはまだ何かある。」
 そこへ室外から連絡が入った。
 エルナハンが受け、ユーニスに伝えた。
「アルハラが議長に至急会いたいそうです。」
 ユーニスは一瞬黙って、そして告げた。
「ここへ来るように。」

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