神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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訪問者
 その晩は時化て、海鳴りがひどかった。
 その『船』が漂着したことに誰も気づく者はいなかった。
 深い闇の中で、ナダイの家の鳥だけが鳴いた。
 ナダイは海鳴りのせいで眠りが浅かったのですぐに目を覚ました。何か、いつもと違う気配を感じてそっと起き上がった。
 どこか高ぶるものを押さえながら、ナダイは海岸へと向かった。
 砂丘を越えた。
 そこには白い砂の上に今まで見たこともないような造りの、船のような巨体が横たわっており、ナダイの大きく見開かれた目に飛び込んで来た。
 そっと村に戻り知らせようと振り向いたナダイの目の前に、見たことのない人物が静かに立ちふさがった。
 その人物はそっとナダイをなだめるような素振りを見せ、告げた。
「怪我人がいる。水をもらえないか?」
 ナダイはうなずくと、待てという仕草をして小走りに村へと駆け戻った。
 ナダイが外からもどる音を聞いてエイジアは半身を起こした。
「どうしたんだ?こんな夜更けに。」
「『訪問者』だ。おまえはすぐに老の元へ知らせろ。」
「誰だ?」
「見たことのない者だ。怪我人がいるという。何人かはわからない。」
 ナダイは水を汲むと少し思案した。
「ツーリも呼んでくれ。」
「わかった。」
 そう告げるとエイジアは家を飛び出した。
 走った。走りながら、エイジアは胸がきゅうっと絞られる想いに覆われていた。
(来た。)
(だが・・何が?)
 老の庵は走ればすぐだ。小さな村だ。
「老!老!訪問者です!ナダイからの知らせです。」
 小さな庵の主は、暗闇の中から目をしばたたかせて現れた。
「なんと?この夜更けに、しかも時化の中、・・訪問者などと。」
 だが、老いた導者は何かを感じたのか、すぐに声を低くして指図した。
「おまえはそのまま村の主だった者を集めよ。わしは一足先にナダイの元へゆく。」
 エイジアはうなずいてさらに走った。
 ツーリを起こし、壮年の者たちを起こして回った。
「いつもと違う?ナダイが?」
 ツーリの言葉にうなずきながら、エイジアは足を速めた。
 男たちが砂丘からその光景を見下ろした時にはすでにナダイと老がその船の主たちと向き合っていた。
 彼らはナダイの水を受け取ると船へと姿を消した。ひとり残った年輩の男が、ナダイと老とともにこちらへと歩み出した。
 村の男たちは顔を見合わせると、ツーリが代表となって彼らの元へと砂丘を滑って行った。
「老。」
 老はうなずくと、低く落ち着いた声で言った。
「彼らは今、術がない。村へ案内する。まずはこちらが我らとともにまいる。」
 男は静かな笑みを浮かべると、手を差し出した。
 ツーリは彼の手を取った。
「トーダ・ムネトウと言います。このランバーの操縦者です。」
「ランバー?」
 トーダは振り返って『船』を指した。
「この船はこの時化で打ち上げられたのか?いったいどこから来たのだ?」
「海から来たのではない。空からだ。」
「空?」
 老はうなずいてツーリに告げた。
「中に3人いる。ひとりが怪我をしている。村へ運んでくれ。」
「3人?この大きな船に3人?」 
 老とナダイのふたりはトーダを案内した。
 村の男たちがランバーという船へと向かうのを見送って、エイジアはトーダと名乗る男をともなう老とナダイの後ろに従った。
 歩いていた男がふと、後ろの気配に気づいて振り返った。
 一瞬エイジアの顔を見つめると、老に聞いた。
「彼は?」
「エイジアと申す。」
 老はそれしか言わなかった。
 トーダはもう一度振り返ったが、老が歩みを緩めないので歩き出した。
 ナダイが一瞬心配そうな瞳をして振り返った。が、何も言わずにみなとともに黙々と村へと向かった。

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