神々の黄昏の時代
エイジアの民に伝わる《ジン》
それを探す首都の民

《ジン》とは?サイタンとは?

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ドラゴ
 潮騒の音が大きくなった断崖のそばに、大木があった。
 その大木には、人間のものである布が干してある。
 大木のうろには人が暮らしている形跡があった。
 その時、後ろで茂みの揺れる音がした。
 何かが逃げた。
 体躯のいいデンがすぐさま追って、その人物の腕をつかんだ。
「なんだい!おまえらは!」
 初老の女が叫んだ。
「待って。害を加える者ではありません。」
 サオ・ハが静かな澄んだ高い声を上げた。
 女は緊張した面持ちを4人に向けた。
 なかで、アテヒトの顔に目を止めると、ほんの一瞬まばたきした。
「放して。」
 サオ・ハがデンに言って、デンは女を掴んでいた手を放した。
「なんなんだい?あんたたちは?」
 つかまれていた手をさすり、女は乱れた髪をかきあげた。
 アテヒトの顔をチラリと一瞥した。
「この島には他に人は?」
 デンが聞いた。
「・・。」
「助けてほしいんです。これは人間全体にかかわることです。今こそ真心からの智慧が要るんです。」
 サオ・ハが真正面から告げた。
「なんだいそれ?なんのことだい?」
「どうしてここに?」
 トーダの問いに女はへん、と笑って答えた。
「オレは漁師だが、船が難破して漂着した。だが、この島も十分暮らして行ける。だからここで暮らしていくことにしたんだ。」
「他の人間にも会えないか?」
「会っても無駄だ。偏屈な野郎どもばかりだ。」
 その時、熊のように大きな男が太い枝に石斧のようなものを縛りつけたものを振り回して襲ってきた。
 その斧がアテヒトに当たりそうになって、とっさに女はアテヒトをかばった。
「よしな!」
 男がさらに殴り掛かろうとするのを、女は止めた。
「だが!」
「いいんだ。やめるんだ。」
 女の態度は一変した。
「話を聞こう。」
 女が火を炊いて、湯を湧かした。
 島の草を湯に入れて煎じ、それを木の椀に入れてみなに回した。 
「オレたちは元々人が嫌いだ。だからこんな絶海の孤島に住んでる。だが、人を殺すまでは憎んじゃいない。ほっておいてほしいだけだ。」
 女は愛想はよくはなかったが、わるい人間ではなさそうだった。
「わたしはトーダ。こっちはデン。サオ・ハ。そしてアテヒトだ。」
 紹介されたアテヒトにまた瞬間見入った。
 だがすぐに気を取り直したように、問うた。
「どういう事情なんだ?」
 黙って女を見つめていたサオ・ハが前に進み出て胸に手を当てて、言葉を口にした。
「テシケ サイタン ヌレワバウ ウカチ」
 女は鍋をかき回す手を止めた。顔はこちらに向けないが、聞いているのが分かった。
「首都の民にジンが失われるということは、この星からジンが失われていくということ。ならば、どこにいようとその影響は受けます。人から遠く離れて暮らそうとも。エトーの一族にはその時のために智慧が伝わっています。今がその時です。あなたは知っていますね?」
 女は顔を向けた。
「境人か?」
 もう一度顔をそらすと、つぶやいた。
「どこまでわかる?」
「あなたが何か知っているということです。」
「こいつは?」
 女が指差したのはアテヒトだった。
「もしかしてわたしのことを知っている?」
 アテヒトは思わず聞いた。
 女は微かな笑みを浮かべた。
「オレの名はドラゴ。知らないさ。だが・・」
 ゆっくりと顔を向けた。その顔には不思議な笑みが浮かんでいた。
「エトーのことは聞いたことがある。」

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